2月5日早朝以降、14日間の船内待機を余儀なくされている3,000人を超える乗員・乗客たちは、2月13日の時点で新たに39人の感染を確認し、感染者は合わせて174人にのぼりました。
うち、4人が重症との事で、まだまだ感染の勢いはとどまるところを知りません。
誰もが一生に一度くらいはこんな豪華客船で旅をしてみたい、という夢を抱かせてくれるような素晴らしい船旅が悪夢と化してしまいました。
この悪夢は乗客だけでなく、船旅を提供している運営会社プリンセス・クルーズ社にとってもまたとんでもない負担を強いられる結果となったようです。
当記事では、このクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が今回のコロナウイルス感染騒ぎによって、どのような損害を被ることになるのかに焦点を絞ってリサーチしました。
ぜひご覧ください。
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目次
ダイヤモンド・プリンセス号は日本船籍の船ではない
ダイヤモンド・プリンセス号は日本国内(三菱重工業長崎造船所)で建造された最大クラスの客船と言われていますが、実は日本の船ではなくイギリス船籍。
2014年以降、日本のマーケット向けに横浜発着のクルーズを展開してきたのだそう。
この、“外国船籍”ということが、日本政府としての積極的な対応を遅らせている原因なのかも知れません。
日本には「検疫法」というものがあります。
「国内に常在しない感染症の病原体が船舶・航空機などを介して国内に侵入することを防止するとともに、船舶又は航空機に感染症の予防に必要な措置をとる」ことが目的の法律。
簡単に言えば、しっかり検疫をしなければ船から乗客を上陸させることが出来ない、ということなんですね。
ですから、日本政府としては今出来ることは「検疫」だけ。
船の中に勝手に乗り込んで掃除や消毒、壊れたトイレの修理なんかは勝手に日本政府は出来ないんです。
なぜなら船内は外国だからです。
ただ、今までクルーズ船から上陸させられない、にとどまっていたのが、2月13日の閣議決定で「隔離や停留は入国前に実施する」という政令に改正。
簡単に言うと、上陸できないだけでなく、クルーズ船内の「個室」から出ないように(隔離)、という国の決まりができたことになるのです。
検疫期間中の生活費
いくら外国籍のクルーズ船とはいえ、この法律で日本は乗客を隔離したことになり、乗客たちはますます不自由な生活を強いられることも予想されますね。
国の法律に基づいての隔離生活のため、毎日の食事、薬、検査費用などは公費負担ということになります。
つまりは税金。
この状況を見かねて、崎陽軒(横浜市西区高島2)が「シウマイ弁当(1個860円)」4000個を無償提供したというニュースは記憶に新しいと思います。
崎陽軒は「不自由な状況の乗客・乗組員の方に、少しでも励みになればという話しが社内で出て、食品企業としての社会的な責任からシウマイ弁当をお届けしたい」とコメントしていますね。
不自由な生活を強いられているものの、検疫期間中の乗客らの生活資源の供給は日本が国をあげて支援ということですね。
「クルーズ代金全額返金」を決定したプリンセス・クルーズ社
さて、また驚くようなニュースが入ってきましたね。
クルーズ船の運航会社プリンセス・クルーズ社が2月10日までに乗客に旅費を全額返還することを明らかにしました。
同社の日本オフィスによると、旅費は旅行会社を通じて返金する予定なのだそうです。
さらに、次回2021年2月28日までに予約をすればクルーズ代金は無料になる、という特典も付けました。
これだけの豪華客船の旅、旅行代金もかなりの金額のはず。
しかも3,700人という人数です。
いったいいくらの金額をプリンセス・クルーズ社は返金することになったのでしょうか。
ちょっと計算してみました。
今回のクルーズは15泊16日の予定で、旅行代金はグレードによって25万円~138万2千円の幅がありました。
例えば仮に乗客3,700人が全員、一番お値打ちな25万円のコースだとしても
25万円×3,700人=9億2,500万円 ‼
さらに、グレードアップしたコースを取った乗客の旅費の金額を加算すると、大変な金額になることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
この金額に加え、次回予約を入れればその分の旅費も無料となり、倍の金額をプリンセス・クルーズ社が負担することになりますね。
一概に、「損害額」と言ってしまえば確かに運航会社にとっては大変な損失ですが、2月9日付けの運航会社から乗客向けのメッセージには次のような言葉がありました。
『…このクレジット(次回の旅行代金無料)とクルーズ代全額返金で、皆様が現在感じているストレスが少しでも軽減できるように願っております。…最後に皆様とこれまで困難を一緒に乗り越え、ご協力いただいたことに感謝申し上げます。』
贅の限りを尽くし、人生最後の思い出に…という想いで参加した方もあったでしょう。
そういった人たちの思い出を辛いものにしたくないとする、運航会社側の精いっぱいの誠意のように受け取れます。
乗客側にはお金では解決できない苦痛もあるでしょうが、運航会社にとっても膨大な損害であることには変わりはありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
これだけの騒ぎになると、コロナウイルスが終息に向かわない限りクルーズ船のイメージダウンは当面避けられないでしょう。
今になって思えば、感染が始まった頃にまだ船内ではショーなどを催していた、との事ですから、色々な意味で後手後手に回ってしまいました。
運航会社としては損害覚悟で誠意を持って対応するしかなく、我々日本人は公費負担を覚悟で日本を感染から守らねばならないということになるでしょうか。
コロナウイルスがもたらしたもの…。
これから風評被害を含めて計り知れない損害が待ち構えているのかもしれません。