毒親の影響というのは本人が思う以上に大きいものです。会社を辞めたい、今の家も引き払って毒親と縁を切りたいと思っても、親が反対や妨害をしてくることを懸念して、なかなか思うように動けない人は少なくありません。こちらの記事では、毒親の妨害が予想される状況で退職する際のポイントや注意点について見ていきます。
目次
毒親のいる人がなかなか退職に踏み切れない理由
なぜ毒親がいると退職に踏み切れないかというと、毒親との意見の対立が予測できるからです。元々、社会人であれば転職や退職について親の意見を聞く必要は一切ありません。しかし毒親は子供を自分の支配下に置きたがるため、自分と親の意見が相反すれば強固な反対にあうことは十分に想像がつきます。
従って、退職したいのにできないと思い悩むのであれば、以下のような状況が理由として考えられます。
親が今の職場のことを気に入っている
現在の職場を安定性や規模の大きさなどの観点から親が気に入っている場合、子供は積極的に退職したいという意思表示をしづらくなります。特に毒親からの干渉を受け続けていると、子供は本人の意思よりも親の意思を優先させようとする傾向が強くなるため、退職についても親の顔色を真っ先にうかがってしまいます。その結果、退職したいと言い出せずにずるずると今の職場で仕事を続ける可能性が高いです。
一方、親の方も子供の職場に対して必要以上に執着する傾向が見られます。子供の就職活動に親が付き添ったり、内定が出た職場を親が気に入らないからと言って断らせたりするようなケースがありますが、逆に公務員や大企業など、親の希望通りで待遇が良い職場に勤めている場合、子供が辞めたいと言っても親が許さないケースもあります。
「仕事を辞めること」に対して強く否定してくる
職場に関係なく、仕事を辞める行為そのものに対して親が強く反対してくることもあります。親の世代は景気の低迷を経験しておらず、さらに現代のような多様性のある働き方ではなかったこともあり、一社で勤め上げることが当たり前だった時代です。そのため、仕事に対する認識が子供とはかなり異なっており、転職の必要性や仕事の辛さというものに共感しづらい傾向が見られます。
その結果、せっかく就職できたのに退職するのは根性がないと断じ、辞めることに対して強く拒否されがちです。親の世代は長期的に同じ職場で働くのが当然であり、それによって昇給も見込めていましたが、今は責任ばかりが増えて待遇があまり改善されない職場も少なくありません。それを理解せず、自分の価値観を押し付けたり、毒親にありがちな子供の全否定や支配を優先させたりした結果、きちんと話を聞かずに退職を否定するのです。そこには子供が無職の場合、親として自分が恥ずかしいという自分勝手な思いもあり、子供のいうことに聞く耳を持たない毒親の特徴が見られます。
普通の親であれば、時代の違いを説明することで就職に関する認識の違いを納得してもらうことも可能ですが、毒親の場合は上記のような事情から理解を得るのは困難です。
退職を強行すると毒親が周りに迷惑をかけそうである
親のコントロールからは逃れていても、周囲とのしがらみが原因で退職に踏み切れないというケースもあります。特に親がなりふり構わずに周囲に醜態をさらすタイプの毒親の場合、親の反対を押し切って無理やり退職すると周りに迷惑をかけるかもしれないという懸念が生じます。
具体的には、退職する会社や転職先に親が乗り込んで職場の人に迷惑をかける可能性や、会社の関係者や知人などに何度も電話をかける可能性などです。
周囲の目を気にして体裁を取り繕うタイプの毒親ならば、あまり面識のない子供の職場まで乗り込むケースはほとんどありませんが、実際に職場に押しかけたことがある毒親ならば同様のトラブルを引き起こす可能性はあります。
円満な退職のためのポイント
毒親がいて退職準備が困難だとしても、それは職場には何の関係もありません。他の職場に行くとしても、どのような縁があって今の職場の上司や同僚と関わることがあるかは分からないものです。毒親のことは別として、退職するときには職場との軋轢を生まずにできるだけ円満に退職するように努めましょう。
そのためには、きちんと手順を踏んで早めに準備することが大切です。以下に円満退職のためのポイントをご紹介します。
退職を伝えるタイミング
本人にとっては辞めるだけなのでそれほどタイミングは重要ではありませんが、職場にとっては従業員が一人辞めた場合、新しく従業員を雇用するか、他の従業員を配属させて引継ぎを行わなければなりません。そのため、退職の意思を伝えるのは余裕を持った日程の方がおすすめです。
法的には退職の2週間前に伝えれば問題ないとされていますが、引継ぎを考えれば最低でも1ヵ月、人事を考えるとできれば2ヵ月前には伝えておきたいところです。
退職の意向を伝えるときは、いきなり社長や所長に話を通すのではなく、まずは普段お世話になっている直属の上司や先輩などに伝えましょう。事情を理解してもらいやすいですし、現場のことを熟知しているので引継ぎもスムーズになります。
退職の理由・伝え方
退職の意向を伝えるときは、当然理由を伝えなければなりません。この時、ネガティブな事情を伝えると、不満を解消して仕事を続ければいいと引き留められる可能性が出てくるからです。もちろん、親との軋轢を理由として挙げるのも避けましょう。自分自身の周囲からの評価が下がりますし、毒親と関わったことがない人からの理解が得られにくいため、無用なトラブルの元となることもあります。以前からやりたいことがあったのでそちらの道に進みたい、スキルアップを目指したいなどの前向きな理由を伝えると、職場側も慰留を諦める可能性が高いです。
退職することを伝えてからも、引継ぎの間はその職場に残ることになるので、伝え方は十分配慮しましょう。人間関係の悪化を防ぐためにも、会社への不満は口にせずにこれまでの感謝の気持ちを伝えること、ひき止められないように辞める意思が変わらないことをはっきりと意思表示することが大切です。
毒親から逃げるために退職する際の注意点
毒親から逃げるために退職するときには、上記のような円満退職を目指す行動に加えていくつか注意が必要です。
まず、親しい間柄の上司であっても退職理由として親のことを伝えないのは先述の通りです。ただし、退職について知られたときに親が会社に押しかける可能性がある場合には、黙っておくよりも上司に相談しておきましょう。受付の段階で親の電話や訪問を防ぐことができるので、精神的な負担がなくなって引継ぎなどの作業もしやすくなりますし、退職までの短期間だと割り切れば、職場としても対処がしやすいです。
親に対しては、退職して離れていくと決めたなら話をしない方が賢明です。毒親は子供の話に聞く耳を持たないことが多いため、理解を得ようとしても不可能に近いですし、逆に猛反対されて退職の計画が頓挫してしまう可能性もあります。
毒親育ちが原因で仕事に問題を抱えることも
毒親に育てられた人は精神的な部分で親の影響を受けており、それが仕事で表面化することも少なくありません。退職後は次の職場で働く予定の人がほとんどですが、新しい職場で心機一転して頑張るつもりなら、予測できる問題とその原因を理解して、対策を講じておきましょう。
ブラックな会社から抜け出せない
入社して実際に働くまでは、新しい職場がブラックだったと気づかない人は多いです。ですが、普通はブラック企業で努力をすることの無駄を悟り、新しい職場を探して転職するケースがほとんどです。
毒親に育てられた場合、常に否定されてばかりなので幼い頃から自己肯定感が低いままで成長してしまい、ブラック企業で働いても自分を尊重されないことに対して疑問を抱きません。その結果、過酷な勤務状況でも働き続けて、心身を病んでしまうことがあります。
異常な環境だと気づく人もいますが、自己肯定感の低さからどうせ新しい転職先が見つからないと就活をする前に決めつけたり、退職をほのめかしたときに無責任だと罪悪感を植え付けられたりして、結局そのまま居続けてしまいがちです。
毒親とブラック企業は相手を押さえつけるために否定ばかりする点、自分の思い通りにするためにその場しのぎのご機嫌取りをする点などがよく似ています。冷静な判断力が持てず、自分の評価が低すぎるのは毒親の影響ですが、そうと気付かないままブラック企業から逃げ出せない人は少なくありません。
人間関係をうまく築けない
毒親育ちの人は、親から十分に愛されていない、否定ばかりされている環境を常としているため、他人の評価を極端に気に欠けたり、嫌われていると思い込んだりするケースが少なくありません。その結果、心を許した人に依存や執着をしたり、逆に疑い深くなったりすることが多く、コミュニケーション能力が不足しがちです。そのため、多くの人と交流をする営業職などはあまり向いておらず、多くの社員と関わるような職場でもストレスを感じやすくなります。
このような思い込みは短期間で劇的に改善するのが困難なため、すぐに転職を繰り返す傾向が見られます。自分が該当するのであれば、精神的なケアを受けるとともに、新しい職場を選ぶ時に対人ストレスが少ないところを探してみるのも良いでしょう。
例えば、手に職がある人ならば在宅ワーカーとして個別に仕事をもらうのも良いですし、清掃員や警備員のような人との接触が少ない職場を選ぶのもおすすめです。自分が無理なく続けられ、生活できる仕事がないか探してみましょう。
会社から強い引き留めにあったら?
健全な運営をしている職場であれば、前向きな理由を伝えて退職の意思表示をすれば、惜しむ気持ちがあっても快く送り出してくれるものです。しかし、ブラック企業の場合は使い勝手の良い従業員は長く手元に置きたいという自己中心的な考えが強く、責任感のなさを非難したり、逆に企業にとって必要不可欠な人材だと自尊心をくすぐったりして引き留めようとします。
自己評価が低い人はこの引き留めに弱く、結局辞められなかったというケースも少なくありません。
毒親育ちの人は特に、親と同じような行動原理のブラック企業への耐性が弱いため、言いくるめられることが多いです。強い引き留めにあったときは、何を言われても毅然とした態度をとり続けて、自分では対処しきれないと思ったら、退職代行サービスや労働基準監督署などの行政機関、弁護士などを頼るようにしましょう。手続きを代行してもらえるので自分が直接連絡をして強い引き留めにあうこともなく、スムーズに退職できます。
毒親から完全に離れたくて引っ越しも検討しているなら
退職だけでなく、引っ越して毒親から完全に離れていることを検討している場合には、見つからない様にするためにも以下のようなポイントを押さえておきましょう。
まず、引っ越し資金と当座の生活費は前もって計算して貯めておきましょう。毒親に退職や引っ越しの話をしても妨害されるだけですので、実際に引っ越しの手配を済ませてから伝えた方が無難です。状況によっては、家具は自分で買いなおして、置手紙を残して荷物一つ持って出るなど、引き留められないようにしなければなりません。
もちろん、後々連絡や押しかけがないように新住所を伝えず、住民票に閲覧制限をかけるなどの工夫も必要です。賃貸住宅は原則保証人が必要ですが、保証人不要の物件もありますので、探してみましょう。郵便も、転居届よりも個々に住所変更の連絡をした方が追跡されにくくなります。
毒親の支配から抜け出す方法
これまで毒親に押さえつけられてばかりだった人は、反抗するだけでもかなりの精神的負担になります。ですが、立ち向かってみれば意外とすんなり状況が好転する場合もありますので、以下のような手段も検討してみましょう。
まず、親の支配から抜け出すためにも、追跡から逃れるためにも戸籍を親と分ける分籍手続きを行います。これは結婚していなくても、成人であれば問題なくできます。親に見つからずに引っ越すのがベストですが、万が一見つかって押しかけられたときは自分で対応せず、警察に通報したり、弁護士に頼ったりしましょう。裁判所に保護命令を申し立てたり、嫌がらせをしないよう内容証明郵便を送ったりすることも、体裁を気にする毒親の抑止力になり得ます。
逃げ切れた後も不安やトラウマが残っている場合は、専門家のカウンセリングを受けてしっかりケアしましょう。実際に行動して親との距離を開けて時間を置くと、親と自分が別の人格であり、自分で自分の人生を決めていいという意識を持つことができるようになります。
自分の仕事は自分で決めて良い!毒親に支配されることなく退職を
毒親の支配から抜け出すことは容易ではありませんが、社会人になった以上、親の同意がなくても自立することは十分可能です。仕事に耐えられなくなった時、親の主張に違和感を覚えたときは、一度親から離れて自分を見つめなおすという意味でも、思い切って行動してはいかがでしょうか。強い意志があれば助けを得る手段はいくらでもありますので、できるところから始めてみましょう。